久しぶりに夢中になって真夜中まで一気読みあげる本に出会った。
その本は、「あのとき僕は (シェルパ斉藤の青春記)」斉藤政喜 著(しなのき書房)。
還暦を迎えた著者が、少年時代から旅するライターとして自立するまでの自身の成長をエッセイにまとめた本。
小説のように展開する逆境にもめげず、いつも前向きで自分の気持ちに正直に人生を切り拓いていくパワーが爽快だった。
内向きな私の生き方とはあまりもに真逆な生き方。
だからこそ、とても新鮮で爽快だった。
さらに、冒険や旅をするアウトドア派でありながら、心の奥に秘めた優しさとロマンティストでとても感性が豊かな、レコードでいえばA面とB面の両面が同じくらい充実した生き方にあこがれた。
前置きが長くなってしまった。
この本で最も私の心に刺さったのが、「1通の手紙が人生を変えることもある」というタイトルのエッセイ。
何者でもなく将来も見えない、ただの冒険好きな夜間部に通う(家庭の事情で2浪して入った)大学生だった著者が、揚子江をゴムボートで下る冒険を思いついたことから新しい人生が拓けていく。
メーカーに頼み込んでゴムボートを無償提供してもらうこととなったものの、メーカーからは、宣伝のためにその冒険をどこかの雑誌に書いてほしいという条件をだされた。
彼は愛読していた「ビーパル」に掲載してもらえるよう編集部に手紙を出した。
自分が何者で、どんな人生を歩んで、どんな旅をしてきたのか、稀有なオーストラリアでの体験など、無欲で思いの丈をしたためた手紙を。
その1通の手紙が本格的に彼の人生を変えることとなる。
彼の手紙の内容と文章のすばらしさに感激した編集長から、雑誌への掲載どころか大学卒業後にうちで働かないかとオファーを受けたのだ。
それからの彼の活躍と彼が思い描いていた人生が開けていく。
彼は言う。
「1通の手紙が未来を拓くこともある。チャンスはどこにでもあるし、人生は可能性に満ちている。実体験者として僕は若者にそう伝えたい」
若者に限らず、迷い不安を抱えながらも人生を前向きに進もうとする者に刺さる一言だ。
蛇足ながら・・・
もちろん1通の手紙が人生を変えたのだが、その手紙を書くまでの彼の生き方や思いと情熱があったからこその結果であることを忘れてはならないと思う。
(勝手に湧いたイメージを言葉にすると)
彼にとっての1通の手紙とは、太陽の光(=これまでの彼の生き方や思いや情熱)をくもりのない純粋な虫眼鏡で1点(=1通の手紙)に集約したもので、その結果、火を起こした(=人生が動き出した)というイメージが湧いた。