「じゃあもう、がんばらなくていいんじゃないかしら」

古内一枝著 「女王様の夜食カフェ」 『第三話 秋の夜長のトルコライス』より

 

主人公のシャールが発した「じゃあもう、がんばらなくていいんじゃないかしら」

が、強烈に私の胸に響きました。

 

この言葉は、物語中で、発達障害かどうかわからない小学1年生の息子を、なんとか皆と同じ学習や生活が送れるようにと必死に頑張って育ててきた母親未央が、これ以上どうしていいかわからないとドラアグクウィーンのシャールに語ったときシャールが返した言葉です。

 

(以下 P203より抜粋 )

子供のためによかれと思ったことを、全力でやってきた。

100パーセント、否、それ以上にがんばってきたのに。

「でも、もう、これい以上、どうやってがんばったらいいのか分かりません・・・」

未央は深くうつむいて、肩を震わせた。

シャールは黙って未央の話を聞いていたが、やがて、おもむろに口を開いた。

「じゃあもう、がんばらなくていいんじゃないかしら」

「え・・・・・・」

さりげなく告げられた言葉に、未央は思わず顔を上げる。

「目一杯頑張ったなら、もうそれ以上、がんばる必要なんてないのよ」

(以上抜粋)

 

このシーンを読んで、私自身が救われたのでした。

 

3年前、私が仕事を辞めるときのことです。

 

仕事を辞める前まで、限界まで頑張ったつもりでした。

でも、心身に不調がでて、これ以上無理をしたら本当に体がどうしようもなくなるという「直感」が湧き上がっていました。

 

同時に、辞めようとする気持ちに反対するように、自分よりもっともっと大変な思いをして頑張っている人が大勢いるのに、なぜ自分は耐えられないんだとか、自分は途中で逃げるなんて卑怯じゃないのか?など、「自分の弱さ」を責める気持ちがありました。

 

それをいまだに引きずっていました。それが、心に刺さった棘のようにずっと痛みを伴って引っかかっていました。

 

でも、このシャールの一言で、自分を責めるネガティブな気持ちを断ち切ることができたのです。スパッと。

 

そうだ、「自分なりに」これまで限界まで頑張ってきたのではないか。頑張りを人と比較する必要はないんだ。自分が頑張ったと言えるなら、素直に自分の頑張りを認めていいではないか。そして、これ以上は無理だと素直に言い切っていいのだ・・・と心から思えた瞬間でした。