茶室の掛け軸が教えてくれたこと

ある茶会に参加してきました。

お茶の作法は全くわからないのですが、作法にこだわらずお茶を楽しんでもらいたいという主催者の説明があったので、気軽に参加してみたのでした。

 

茶室に通されると、真正面に庭園を見渡せる明るい8畳ほどの空間に床の間や茶釜などがあり、日常とは違った落ち着きがありました。

 

座るとすぐ、真横にある床の間の掛け軸が気になりました。

ある書道家の揮毫による「行雲流水」(横書き)の掛け軸が、結界の役割を果たすかのように茶室を俗世間から切り離している感じがしたのです。

 

お茶の先生から、掛け軸について次のような説明がありました。

「『行雲流水』とは、空を行く雲や川の流れの水のように、自然の成り行きに任せ

るという意味で、ものごとにこだわらないということを表しているといわれています」

 

その言葉の意味を表すような自然体の筆の運びに心が洗われる感じがしました。

同時に、自分が思うよりもっと大きな世界の中で生きていることに気づけたような気がしました。

 

おそらく日常の中でこの言葉に出会ったら、その意味を素直に受け取ることはできなかったと思います。

 

きっと、「いやいや、人間には『意志』や『思い』がある。だからこそ人は自分の人生を切り開いていけるのだ。流れに任せたら流されるだけだ」と、反発したと思います。

 

もしかしたら、「そんな当たり前のことを今更」と流してしまったかもしれません。

 

この掛け軸の書は、そんな反発がいかに小さな小さな塵以下のことであるかということを、いや・・・人間の思いは思いとしてありながら、そんな次元を超えたもっと大きな世界にいるということ・・・

また、一見当たり前に思われることが、実は人智を超えたもっと大きな世界のことであるということ・・・

を、教えてくれた気がします。

 

茶室の掛け軸は、静かに深く心に語りかけてくれたような気がしました。